どっちを利用すれば有利に資金調達できるの?
ファクタリングと売上債権担保融資はどちらも売上債権を利用して資金を調達するという点で共通していますが、その違いを正しく理解している人は少ない印象です。
どちらも売掛金を現金化するんでしょ?とその違いを混同し、違いをしっかりと理解していないために誤まった判断をしてしまっているケースも多いです。
この記事ではファクタリングと売上債権担保融資を徹底比較し、その違いについて説明していきます。
目次
「ファクタリング」と「売上債権担保融資」とは?
まずは、ファクタリングと売上債権担保融資とは何ぞやということをそれぞれ説明していきます。
ファクタリングとは?
ファクタリングとは資金調達手段の一種で、保有する売掛金を「譲渡」して資金調達を行うものです。
期日前に資金回収を行いたい場合に利用することになりますが、通常より早く資金を回収できるため、手数料を払う必要があります。
売上債権担保融資(ABL)とは?
これに対して、売上債権担保融資とは、文字どおり「売上債権を担保とした借り入れ」のことを言い、英語の頭文字をとって「ABL(Asset Based Lending)」と呼ぶこともあります。
金融機関は、融資した現金が回収できなかった場合には、売上債権を直接回収し、その返済に充てることで、未回収となるリスクを低減することができます。
こちらもファクタリング同様、売掛金があれば利用することができるため、不動産などの価値のある資産を持たない中小企業や個人事業主でも資金調達を行える可能性を広げる手段です。
ファクタリングと売上債権担保融資の比較表
ファクタリングと売上債権担保融資の違いを表にまとめてみました。
売掛債権担保融資 | ファクタリング | |
調達時間 | 2週間〜3週間 | 最短即日〜数日 |
審査項目 | 売掛先と自社の信用リスク | 売掛先の信用リスク |
資金調達コスト | 5〜10% | 2〜30%程度 |
保証人 | 不要 | 不要 |
担保 | 必要 | 不要 |
リコース | 有り | 無し |
この違いを踏まえて、ファクタリングと売上債権担保融資を徹底比較し、どちらを利用すべきかを考えていきましょう!
売上債権担保融資よりファクタリングを利用するメリット
売上債権担保融資とファクタリングを比較した時にファクタリングを利用するメリットは以下の通りです。
迅速な資金調達が可能
売上債権担保融資の場合には、銀行内の審査プロセスなどがあるため、実際の入金までに2週間〜3週間程度かかることが多いです。
一方、ファクタリングの場合には、以下の必要書類を揃えておけば、即日資金調達することも可能です。
- 決算書:直近2期分(税務申告済の押印のあるもの)、
- 試算表
- 過去・直近の取引・入金が確認出来る書類
- 取引先との基本契約
- 会社謄本
- 成因資料:注文書・契約書・発注書・納品書・請求書など1案件につき2点
- 入出金の通帳
- 納税証明書
ただし、ファクタリングは担当者が人力で審査を行うため、即日資金調達をしたい場合には、できるだけ早めにファクタリング会社に相談をするようにしましょう。
自社の財務状況の審査が不要
売上債権担保融資とファクタリングの大きな違いは、信用力を調査する対象です。
売上債権担保融資の場合、資金調達を行おうとしている会社の財務状況を審査して回収に問題ないかということと担保となる売掛先の信用力の2つを確認します。一方、ファクタリングの場合には対象となる売掛先の信用力を審査するだけになります。
そのため、ファクタリングでは自社の財務状況は関係なく、
「売掛先が健全かどうか」
で資金調達の可否が決まります。
自社の財務状況はファクタリングでの資金調達とは無関係ですので、
- 赤字決算で将来計画が描けない
- 債務超過に陥っている
- 税金や従業員給与を払えない
- 銀行審査に通らない
- 借入金をリスケ中
といった場合でも、資金調達を行うことが可能です。
財務諸表をスリム化できる
ファクタリングを利用すると、財務諸表のスリム化につながりますので、ROAやROIなどの各種指標が良くなるというメリットもあります。
売上債権担保融資による資金調達の場合、あくまで「借り入れ」ですので、バランスシート上は、「現金」が資産の部に計上されるとともに「借入金」が負債の部に計上されますね。
一方、ファクタリングにより資金調達を行なった場合には、「現金」が資産の部に計上される一方、資産項目である「売掛金」が減少することになりますので、負債が増えず、バランスシートはスリムになるのです。
ファクタリングより売上債権担保融資を利用するメリット
売上債権担保融資とファクタリングを比較した時に売上債権担保融資を利用するメリットは以下の通りです。
手数料が安くなることが多い
ファクタリングではなく、銀行融資による資金調達を行う一番のメリットは、手数料が安いということです。
手数料相場を見てみると、
- 売上債権担保融資:5〜10%程度
- ファクタリング:2〜30%程度
と売上債権担保融資の方が手数料が安くなる傾向にあるんですね。
特に取引先への通知が不要な2社間ファクタリングの場合には手数料が10%〜30%にもなりますから、利用は慎重にならざるを得ないですよね。
多額の借入を行うことが可能
売上債権担保融資の場合は、資金調達企業の信用力次第ですが、場合によっては売上以上の借り入れを行うことも可能です。
一方、ファクタリングの場合には、売掛金を譲渡することで資金調達を行う手段ですから、どんなに多くても売掛金以上の金額を調達することはできません。
多くの資金を安い手数料で調達したい!という場合には売上債権担保融資を利用する必要があります。
ファクタリングと売上債権担保融資のどっちを選ぶかの判断基準
ファクタリングと売上債権担保融資それぞれのメリットを比較しながら説明しました。どちらを選べば良いかまだ決められないよ!という人のために、どちらを選べば良いかの判断基準を3つ紹介していきます。
1.調達したい金額は売上債権より多いか少ないか確認する
調達したい資金額以上の売上債権がなければファクタリングを利用することはありません。
しかも通常「掛目」といって、100の売掛金全額を買い取ってくれることは少なく、大抵80くらいを買い取ることになりますので、調達希望金額を大きく上回る売上債権を持っているかを確認しましょう。
- 十分な売上債権がある→ファクタリング
- 十分な売上債権がない→売上債権担保融資
となります。
2.資金が必要な緊急度を考える
資金が今すぐ必要なのか、2週間から3週間程度は余裕があるのかという資金需要の緊急度を考えましょう。
ファクタリングは最短即日から数日以内には資金調達をすることができる一方、売上債権担保融資の場合は行内審査がある関係で少々時間がかかるケースが多いです。
- 今すぐ資金が必要→ファクタリング
- 少しは時間的余裕がある→売上債権担保融資
となります。
3.自社が銀行審査に通る財務状況かを検討する
3つ目の判断基準は「自社が銀行審査に通る財務状況か」を冷静に検討することです。ファクタリングは売掛先の信用力を審査しますので、自社の財務状況とは無関係に資金調達をすることができます。
しかし売上債権担保融資の場合には、自社の財務状況が大きな判断要因となり、
- 赤字決算で将来計画が描けない
- 債務超過に陥っている
- 税金や従業員給与を払えない
- 銀行審査に通らない
- 借入金をリスケ中
といった場合には資金調達は難しいでしょう。
- 自社の財務状況が良くない→ファクタリング
- 審査に耐えうる財務状況である→売上債権担保融資
となります。
この記事のまとめ
最後にこの記事をおさらいしましょう。
まとめ
- 売上債権担保融資ではなくファクタリングを利用するメリット
・迅速な資金調達が可能
・売掛先の信用力を審査し、自社の財務状況は審査なし
・財務諸表に与える影響はファクタリングの方が有利 - ファクタリングではなく売上債権担保融資を利用するメリット
・手数料が安いことが多い
・売上金額以上の資金調達も可能 - ファクタリングと売上債権担保融資の選択基準
・調達したい金額は売上債権より多いか少ないか確認する
・資金が必要な緊急度を考える
・自社が銀行審査に通る財務状況か検討する
ファクタリングは数日以内に資金調達が可能であり、自社の財務状況に影響されず現金を入手することができますが、手数料負担は高くなりがちなため、頻繁に利用するのはお勧めしません。
一方、売上債権担保融資は手数料が安いものの、迅速な資金調達には向かず、また自社の財務状況が悪く、売掛先の信用力も低い場合には、ほとんど資金調達は見込めません。
ファクタリングと売上債権担保融資は、どちらが優れているかというよりは、状況に応じて柔軟に資金調達方法を考えるということが資金繰りのためには重要になってきます。
ファクタリングと他の資金調達手段比較記事
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